若干の熱/田島オスカー
例えば隣で眠る時に
横顔を永いあいだ見つめていられない
弱い自分を悲しんでいるあたしに
おまえはそれでいいんだよ、と
そういうあなたが辛かった
例えば隣で眠る時に
すべてを委ねるつもりは少しもなくて
そんな自分を悲しんでいるあたしに
安心できないか、と
そういうあなたこそ悲しかった
例えば隣で眠る時に
なんでも優しくしてしまうあなたの
シャツを握ってしまうあたしに
おまえはそれでいいんだよ、と
そういうあなたが
例えば隣で眠る時は
もう手を握ったりしてほしくない
一人でいる手のひらの
熱の逃げ方があまりにも
まるですべてを晒すようで悲しい
今あなたが
そんなふうに思ってくれれば
なおさら悲しい
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