家族制度(又は宇宙旅行)/吉田ぐんじょう
 



家族たちは
ひとまず火星に踏み出すが
もうとっくにばらばらになっていることを
実はみんなが知っていた
末の妹でさえも

真っ暗な宇宙空間の
遥か向こうに
大昔に打ち上げられた
犬の死骸が
永遠に回り続けている



父親は四人から遠く離れた地点で
環境が変わっても
事態は急変しないことを
必死で解ろうとしていた



火星上に立ち尽くす五人は
まるでちっぽけな
子供のように見えた

そして屹立するロケットは
家の形に少し似ていた


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