祭りの炎/結城 森士
 
灯す
橙色の熱気はその一瞬を燃やしていく
炎が夜空に手を広げるので全てを忘れたい人々も
我を忘れて空へ手を掲げる
少年も闇の空へ手を掲げる

少年の手に握られた白い花が
夜の炎に照らされて揺れ
その中に居る筈の無い少女の
実体の無い笑顔が浮かび上がると
少年はそれを見て火の中に飛び込む
人々は気付かないで笑っている、笑っている
実体の無い笑顔が燃えている
実体の無い笑顔が燃えている
その横で
人々が我を忘れて笑っている

実体の無い笑顔が闇に浮かび上がる
実体の無い涙が夜空を流れていく
だから、蛙は悲しくて鳴いている



或るあぜ道の道端の上に
活けられていた白い花は
忘れられたように枯れてしまった
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