はぐ/夕凪ここあ
 
てる
なんどだって生まれるさ
やさしいけもの
なんかい生まれたのかなんてわからない
わたしはまだいちどだって生き抜いてないのに
ほんとは約束なんて破ってしまいたい

夕日が
きれいだね
のひとことで済まされたあの日
からずいぶん遠くに来てしまった
少しだけ
スカートの裾を短くしてみた
少しだけ
誰かの手のぬくもりが知りたくなった
やさしいけもの
前のように毎晩
眠るのを手伝ってくれるのに
やさしさが
苦しい

傷つけるのは簡単、だってけものだもの
やさしいけもの、やさしさだけじゃだめなこともあるのね

朝起きると
もうやさしいけものはいなくて
母親の胸で少し泣いた
夕日が昨日より切なく見えた
からっぽの箱が少しだけ傷んで
明日からの不安に震えたって
生き抜いてく
少しだけ
やさしいけものの
やさしさに寄りかかりながら


やさしいけもの
かわいいね
ああ、かわいいね
なんて言いながら
育んで来た日々

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