「法然からみた仏教入門」/北紀一
法然から見た仏教は、難解な教義の山を越えることではなく、迷いの中にいる私たちがそのまま救われる道を見つめ直すことから始まる。学びの深さよりも、苦しみの切実さに目を向ける。その姿勢こそが、法然の仏教の入口である。
法然は、比叡山で長く厳しい修行と学問を重ねた僧だった。経典を読み、戒律を守り、悟りへの階段を一段ずつ上る正統な道を知り尽くしていたからこそ、彼は深く悩んだ。自分のように仏道に身を捧げた者でさえ、煩悩を断ち切れず、悟りに届かない。ましてや、日々の暮らしに追われる人々はどうなるのか。その問いが、法然を静かに追い詰めていった。
やがて彼は、阿弥陀仏の本願に出会う。どれほど愚かで、
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