二度童子の魂を運ぶ白鳥の話/板谷みきょう
山あいの小さな村に、おばあさんが静かに暮らしていました。
かつてはおじいさんと二人、ささやかに日々を分かち合っていましたが、
おじいさんは数年前に旅立ち、それ以来、おばあさんは一人、
窓辺に昇っては沈む陽を数えるようにして、季節を送っていました。
歳月は、そっと記憶の糸をほどきながら、思い出の形を少しずつ軽くしておりました。
その為、道に迷う日もありましたが、村人たちはその手をやわらかく支えました。
受け取った笑顔が胸に灯るたび、その温もりはむしろ、
自分がいま細い糸の上を歩いていることを静かに悟らせるのでした。
おばあさんが村の子どもたちに物語を語るとき、
それは昔
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