メモ(転倒)/はるな
 
わたしは、この世界のことがあんまりすきじゃなかった。(美しいと思ってはいたけど)。それだし、世界のほうもわたしのことあんまり好きじゃないだろうなって気がしてた。こちらを向いてくれないし、照らしてくれないし、背だってあんまり伸びなかったし。

でも世界のなかにも好きなものはあって、(たくさんあって)、たとえばどくだみの茂る校庭の裏庭、中学校の体育館の横にある植え込みに沈丁花が咲くこと、選択教室の机はふだんの教室とつかって天板が白くてつるつるしてた、商店街のうすぐらい店で買ったドガの絵の傘(だから雨が降るとうれしかった)、少しかためのゼリーをスプーンでうすく削って食べる、アクリル絵の具のチューブが
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