秋は満ちて行く/そらの珊瑚
 
ハナミズキの葉がいちまい
歩道の煉瓦に落ちていた
秋の刷毛をなんども塗り重ねた深い赤色
葉裏にのせたあさつゆは
指にはめたダイヤモンドよりも
透明にかがやく

風にひるがえってしまえば
しずくはこぼれ
魔法は失われ
どこへ
どこへいくかはもう追えない
ふるさとには帰れない
けれど
その身に刻まれた葉脈は木のかたち
てのひらにのるくらいの小さなみなもと

ひとりになってもひとりじゃない
こころのうちがわはなんのかたち

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