イーストビレッジの夜明け/歌留多カタリ
トースターを買い替えた日
心のなかはいつも雨だった
イーストビレッジに朝が来るたびに
バターをたっぷり塗った
クルミ入りのパンをかじって
テーブルの上の涙の海を泳いでいた
鼻水をすすりあげ
お月さまを見上げながら
本物の孤独って奴をだれかしらに
偉そうな顔をして語ってみたい
バナナの皮をむくみたいに
世界をひんむくなんてできない
お月さまがいうのだから
イーストリバーの彼方に
押しやられたハエどもの末裔は
こんな夜明けを待っていたのかもしれない
我々は長い夜の間に
多くの木を切り倒し船を造り
この村から脱出することに
命を懸けてきた
船に積まれた
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