苗床/みぎめ ひだりめ
 
かたい窓の桟に生えていた
新芽がやわく唸っている
幸福の一つも知らない
夕日の一端を浴びている

美しいものは無礼にも
わたしの瞳に棲みついた
それが滴って根をたぎらせて
舌を痺らせていた
爪先を震わせる

沈黙をするのがどうしても
腹に堪えている
かたい風が肌を撫でる
わたしはひとりで唸っている
感じるままに鈍っているままに
部屋の隅で伏せている

煩わしいものは無礼にも
わたしのからだに根を張った
美しいことを知りたい
不可視でもいいから知りたい
あなたのようにただ知りたい
変わらないものを知りたい

かたい窓の桟に生えていた
新芽がやわく唸っている
わたしは自然がそうするように
美しいものを食んだ
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