リベルタンゴ/りつ
 
運命が疾走を始める

男が草原を駆けていた
絶望に追われて駆けていた
誰も自分と融け合わぬ圧倒的な孤独を
男は知っていた
母でさえ
父でさえ
恋人でさえ
誰とも彼は隔てられ
解り合えたと思った側から
解り合えない絶望へと変わるのだ
酒に逃げても
絶望から逃れられなかった
少年の頃は
まだ逃げきれるかもしれないという
希望があった
その唯一の希望でさえ潰えた
とうとう彼は草原に倒れ込んだ
何故だ!
彼は神を呪った
何故だ!
応えるものは風の音だけ
泣きたい彼の頬に涙なく
嗚咽だけが風を裂いた

遠くから
警笛を鳴らし
列車が近づいてくる

彼はよろよろと立ち上がった
そして───



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