DOUTORにて/花形新次
 
土埃でぼやけた景色しか
記憶になかったのは
遠い昔のことで
今では高層ビルが建ち並び
リニア新幹線の工事をしている

朧げながら
僕にも未来があった
孤独であっても
それが支えだった

いつの頃からか
人並みの生活を送りたい
と思ってから
僕は随分と窮屈な世界に
押し込まれるようになった

しかし、平凡であること
中庸であることが
正しいと信じて来たことに
間違いはなかったと思っている

そうやって
星の数を超える人達が
過ぎて行ったのだ

アイスアメリカーノを飲みながら
ラジオ日経で競馬中継を聞く

ああ、またコントレイルの仔が負けた



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