耳/秋葉竹
駅のまえのバス停で
十人のひとがバスを待っている
ひとりをのぞきスマホをみている
孤独な海の底を
覗きみるような顔で
さざなみがうちよせるかなしみのように
九人の足もとをゆっくりと浸してゆく
夏だけがまだ
ゆっくりと残っていた
ひとりは
バスがいつかはやって来る方向をみている
しあわせを待つような生き生きとした瞳で
人生ってそのひとみたいに
ちいさな波紋になれるといいな
み逃しつづけたやさしい風の音が
ようやくみることができるころ
際限なくつづいていた
閉ざされた生きる意味の秘密なんてのも
ファイトを持てば知ることができるのさ
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