small town girl/ちぇりこ。
小さな町の女の子は
空を見たことがない
小さな町の住人に
割り当てられた空が足りない
朝陽が昇ると溶けてしまう
うす紫のバスに乗って
小さな町の女の子は
茨の蔓を採りにゆく
野茨つるばら、サルトリイバラ
朝陽が当たると朝露に
小さな空を閉じ込める
小さな町の女の子は
茨の蔓で鳥かごを編む
小さな町の住人が
みんな入る鳥かごを
みんな一緒
上を見て
空の色を当てっこしよう
小さな町の女の子は
指さきに刺さった茨の棘を抜く
あ、血の色
血の色はいつも温かい
そうね
きっと空の色
小さな町の女の子は
海を見たことがない
夏は、きらい
影がいちばん
濃くなってくるんだもの
でも、夏の姿は見たことないの
これまでも
多分
これからも
小さな町の女の子は
小さな町の住人と
小さな町で一生を終える
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