楕円/ふるる
 
遠くからの雨が
仰向けで倒れたままの僕たちの瞼にも恵まれ
封じた楕円に触れてもいい頃合いだと知らせる
呼び鈴が鳴らされたが
出ていけない

、 ない……が湿った封筒を差し出し
黒い口を開けても文字は転がり出ない(引っかかっている)
咎めながら求めている声
きっと君にもそういうことがある

一言一言に沿う
涙の一粒一粒は
ふくらんだ楕円を保っている
(二点からの距離の和は常に一定である)
ゼロ超過1未満の離心率e及び
表面張力により
強調され歪められた装飾が
あるのかもしれない

萎えた足に車椅子を勧められ
ささくれた明るい窓辺へ
虫干しのように開かれながら
彼の胸にあったジッパーのような桃色の傷跡を
静かに思い出す時間だ





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