傷と痕/栗栖真理亜
 
哀しみは心のなかで少しずつ融けていく
まるで君といた瞬間がウソみたいに消えていく傷痕

ボクは「消えないで」とわざと深く深く突き刺すんだ
痛みは赤い赤い薔薇の血となって流れるけれど
君はそっとそっと囁いてボクをまた苦しませるんだね

ねえ、望むもの全て叶いやしないんだ
手に入れようとしては逆に失ってしまうものが多くて
ボクは途方にくれてしまう
頭を抱えて地面を見つめてもどうにも仕様がない憂鬱
ボクの精神を覆い尽くす恐怖が深い霧となってボクを侵してゆく

ああ、この指の先にすら触れることの出来ないもどかしさ
ボクを予想の付かない行動へと駆り立てる
闇の中で君が嘲笑(わら)う

ボクの涙が君に届きますように
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