ご主人さまの調教/リつ
 
「ほしい?」
あなたは唄いながら、からかいながらたずねる

「ほしいだろ?」
ビロードの刷毛で全身をなぞるような声

僕は抵抗して横を向く

「ほしいって言ってごらん」

君の瞳を見てしまえばお仕舞い
静かな瞳が微笑みを湛えながら踊っているのを知っているから

「僕の眼を見て」

静かさの圧力。熱い。

「ちゃんと真っ直ぐ見て」

僕は、その真剣さに抵抗できなくなり、
きみの瞳を見てしまう。

真顔だった

ああ、もう駄目だ。溶けてしまう

「ほしいの?」

瞳は正直だ
嘘はつけない

「…ほしいの」

「聴こえないよ」

優しさが溢れている

「きみの可愛い声でちゃんと言って」

ご主人サマは容赦なく羽毛で抱き締める

駄目だ。我慢できない。

「ほしいの!ほしくてほしくて堪らない!」

震えながら戦きながら、わたしは叫ぶ。

「じゃあ、あげるよ」



それは、勝利の宣言だった




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