われら現代ニホン人の肖像/室町 礼
もうセイシンは隅々に残っていない
びた一文、かすりもしない
一筆書きの短い眉がふたつ
戦場のように廃れはてた顔面を二つに
引き裂かんばかりに離れて
てん てん
脂肪の表面を剃刀でうすく切ったとたん
とび出たような黒目が
まるでメダカの稚魚の腹に書かれた
黒い天眼のように小さく
てん てん
ひとつは斜め下を
ひとつは右横を見ている
鼻梁はもぐらのトンネルのように
太く短く
その下の鼻翼も鼻尖も鼻根も
ドランカーに
叩き潰された中華饅頭のように
膨れている
めくれあがった唇だけは
妙に生々しく猥褻なほどに赤く
今にもどろっとしたピンク色の器官が
ハエ
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