教室/秋葉竹
 


「悲しみって 日替りだね」

少し軽めの『君』の声が聴こえた
春の陽気がぬるく感じられる部屋

懈怠たゆたう教室の机のうえに
新しい傷をみつけた
無人の机は古びた傷でいっぱいなのに

「ときが過ぎたぶんだけね」
と『君』の声が聴こえた

悲しみの悲しさから
この部屋の時間は逃げきれないだろう

それを癒せる魔法はどこにもなく
だから傷ばかり増えてゆくのだろうか

傷口にすり込んだ
『君』の凍えた時間や結末に
不器用な悲しみが
また積もる
またまた積もりつづける
いつまでも忘れられない蝶々の
命を召された瞬間の
鮮やかな亡骸のように


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