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夜のガスパール レンブラント,カロー風の幻想曲

アロイジウス・ベルトラン著 及川茂訳

価格:¥4,200(税込)

レビュー:原口昇平
 ベルトランをご存じない方は今日少なくないかと思いますが、この散文詩集が後世に与えた影響はけっこう大きいものがあります。  ボードレールは彼の代表作のひとつである散文詩集『パリの憂鬱』の序文でこう書いています、「アルセーヌ・ウーセに(略)私は貴兄にちょっとした告白をしなければなりません。もうそれはすくなくとも二十度目だったでしょうか、アロイジウス・ベルトランの有名な『夜のガスパール』(略)を繙いているうちに、何かしら類似したものを試みたいという考え、彼がかくも奇妙に画趣ゆたかな昔の生活の描写に適用した手法を、現代の生活、というかむしろ、より抽象的な、現代のある生活に適用してみようという考えが、頭に浮かんだのです」(阿部良雄訳)  ボードレール以降散文詩形式は引き継がれていきます。現代の散文詩形式の起源となったこの『夜のガスパール』は、このような文学的影響ばかりでなく、音楽の世界にも影響を与えました。ラヴェルはこの詩集に収められているうちの三篇の詩にインスピレーションを得、悪魔的なほどに美しく超絶技巧を要するピアノ曲『夜のガスパール』を作曲しました。作曲者自身はこう語っています。「『夜のガスパール』は悪魔の助けを借りて書き上げられています。でもそれは驚くにはいたりません。悪魔がこの詩の作者なのですから」(渋谷和邦訳)  マラルメをして「ベルトランをごらん、そこには全てがある」と言わしめ、またシュルレアリスム運動の創設者ブルトンをして「ベルトランは過去においてシュルレアリストである」と言わしめた彼の真実の姿は、極貧の生活のなかで何の名誉も与えられず三十四歳の若さでこの世を去った不幸な詩人でありました。  この詩集を通じて、散文詩の源流へと遡ってみませんか。

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